始まりの終わり。

6/33
前へ
/33ページ
次へ
   操は降りてきた途端脚立から手を放し、ドアに向かおうとする俺のカーディガンの裾を軽く掴んでくる。 「伸びるから、やめろよ」 「だって……」  なにが“だって”だ。  いっそそこに壁に押し付けて、指だけでめちゃめちゃに泣かせてやろうかと思う。啼かせるんじゃなくて。  普通に女と関わりながら男をやっていれば、どんな感じで女が喜ぶか、そして泣き喚いて嫌がるか。  個人差はあれど、だいたい判る。  同じ行為でもこちらの意志と細やかな仕草で女はいくらでも喜ぶものだし、そして生理的な嫌悪も抱くものだ。  その生理的嫌悪の方で泣かせてやろうか、という衝動は決して性欲とは呼べないと思う。  だって俺、女は可愛がりたいから泣くところなんて基本的には好きじゃない。  何より、面倒だし。 .
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加