始まりの終わり。

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   それがちっとも苦痛ではなくて、“判ってる”と自分の中の彼女の頭を撫で回したい気分になるんだ。  そんな自分に出会ってから、梓が俺に何を求めていたかがようやく判るようになった。  梓は本当に家の中の些細なことに気付いて欲しかったわけじゃない。  俺の中に自分の場所が欲しかったんだと思う。  今、俺の中に芽衣の場所がちゃんとあるように。  それに気付いてから、改めて梓には済まないことをしたと思えるようになった。  食わせて愛でて守って、それでいいじゃん……なんてのは、男のひどい傲慢だ。  かといって今さらノコノコと梓のところに言って謝る、というのもどうかと思う。  離婚で食らったダメージはお互い様だと思うし。  伝えるべき……というか、梓が俺の罪悪感を必要としているのなら、この間みたいにどこかで偶然ひょっこり出会うことになるだろう。 .
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