冬眠していた時限爆弾。

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  「お待たせ」  そこには仕事を終えた美智子さんが立っていた。  襟足の後れ毛を気にしつつ、和服姿の美智子さんは部屋に入ってくる。  結局芽衣の口からは何も聞けなくて、言いかけた言葉を溜め息で吐き出した。  美智子さんは俺と芽衣の顔を交互に見比べると、溜め息とも微笑ともつかない息を漏らす。 「……木島ちゃんと芽衣が、ねえ……」  今度は明らかに溜め息だった。  美智子さんはまだ後れ毛を気にしながら、「そのまま座ってていいわよ」と言って俺達の前の一人がけのソファーに腰を下ろす。  結局気に入らなかったのか、「もう」と少し苛立った声を出すと、美智子さんは結っていた髪をパラッと一気にほどいてしまった。  そのときの顔が、あの日ベッドで見た美智子さんとかぶって、一瞬肝が冷える。 .
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