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「……聖ちゃん」
「何ですか先輩」
「……いや、前見ようね。それと、アクセルに乗ってる足、もう少し離してみようか」
聞き慣れた音が、自分とはまた違ったタイミングでシフトチェンジする。
もう何年、この車に乗っているだろうか。
イタリアに居る間は、雅也が定期的にメンテナンスをしてくれていた。
買い替えようかとも思ったが、彼女はこの車が好きらしい。
車種ではなく、コレ自体に思い入れが有るのだと。
「聖ちゃん」
「先輩、待って下さいね、愉しくなってきたところなんで」
「……」
彼女の運転でドライブに行くと告げた時、うちのスタッフの顔が引きつっていた。
雅也は口籠もり、桜ちゃんは後退りまでしていたが。
「先輩、凄い馬力ですねこの車。せっかくマニュアルの免許取ったのに、みんな一度しか私の横に乗ってくれないんですよ、私運転、好きなのに」
……。
どうやら俺も、その仲間に入りそうだ。
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