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腕が悪い訳ではない。 寧ろ、慣れてくればテクニックも上達する方だろう。 ただ問題は……。 「先輩、この先の直線、気持ち良さそうですね。シフト、一回落としてからスタートしようかな」 「聖ちゃん、コーヒーでも飲もうか」 「あ、先輩、喉渇きました? えっと、じゃあ何処か自販機……コンビニ?」 「この先にコンビニが在るから、スピード下げて行こうか」 「はい、わかりました」 ……抑えきれない好奇心と、彼女が本来持っている、生きた乗り物への興味。 これが時に彼女の判断を鈍らせてしまう、アンバランスな難題であると。 オートバイの世界を知ってしまった彼女は、一般よりもスピード慣れをしている。 危険な目に遭って初めて運転を見直すのでは遅いだろう。 どうしたものか。 乗り物に魅了された者の気持ちが判るだけに、どう彼女を諫めていこうかと、俺は運転席にある無邪気な横顔に苦笑いを落とした。
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