55人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はそんなことなどどうでもよく、早く沙耶のところに行きたかったが……
沙「……何さ、皆デレデレして……」
麗「え?」
孝「あ」
コ「うっ……」
沙「何が先輩よ!宮本なんか、留年してるから同い年のくせに!」
確かに宮本は、2年で俺と同じクラスにいるが、歳は一つ上だった。
それよりも、早く沙耶を止めないと……
詩「……沙耶」
孝「何言ってんだよ?高木」
沙「馬鹿にしないでよ!!?私は天才なんだから!!」
俺は沙耶に近づく。
詩「沙耶」
沙「その気になったら、誰にも負けないのよ!?」
俺は更に沙耶に近づいた。
沙「私は……私は!!」
詩「沙耶!!」
俺は周りのことなど考えずに怒鳴る。
沙「っ!!……」
沙耶は驚いた顔をして、俺の方を見上げた。
詩「もういい、もういいんだ……十分なんだ」
俺は優しく沙耶を抱きしめる。
沙「私……汚れてるよ?」
詩「知るか」
沙「血で……服が……」
詩「大丈夫」
俺はゆっくりと、沙耶の頭を撫で始めた。
沙「う、くぅ、えぐ、うぅ……」
俺と沙耶は座り込むように二人一緒に地面に落ち着いた。
沙「う、あぁ、ひぐ、うぁ、うぇぇ、ひぐ」
詩「大丈夫、大丈夫だからな?」
俺は沙耶の全てを包み込むように、抱きしめた。
それからはずっと、沙耶の泣き声が響き渡ることになった。
まるで、地獄の喧騒を止めたがる、一人の天使の声のように……
最初のコメントを投稿しよう!