時には昔の話を

3/7
前へ
/111ページ
次へ
「私…ずっと前から貴女が欲しかった……」 そう言われた瞬間、全てが鮮明に思い出された。 「びっくりしたなぁ。それまで声もほとんど聞いた事なかったもの。嬉しかった。今でも覚えてる…」 苺華は抱きついて聞いてきた。 「私で良かった?」 「良かったよ。あの時の選択で私はかけがえのない大事な人を手に入れたからね。」 私は色んな思い出の濁流に感情が溢れ出しそうだった。 私の高校時代、ただ過ぎていくだけだった日々に苺華が色をくれた。 もし、あの日折りたたみ傘かなにかで帰ってしまっていたら… もし、あの日苺華に運命的な何かを感じずに断っていたら… もし、苺華と出逢えなかったら… 私の人生は全く違う物になっていたと思う。 「苺華って…やっぱり凄い。」 「ううん、凄いのは…藍子だよ。」 不意にある事を思い出した。 「確かさ、私の斜め前が苺華だったよね?」 「そうね…懐かしいわ…」 2人で椅子に座る。そして、不意に振り返った苺華を見て… 「可愛いぃ…」 「ああ!!覚えてたのね!それ!」
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加