現実を知った女

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医学部を卒業して、研修を経てちゃんと医師免許っていう"医者"って名乗っていい証を手に入れて、困ってる人を助けて…それで… って振り返って考えた時にふと自分の時間がどんどん無くなっていくような感覚に陥る… 大好きな苺華が遠く感じる… でも私…もう苺華が居ないと生きて行けないかもしれない… 「苺華…苺華…」 いつもこうして考え込んで、一人になると泣いてしまう… 下手すると一時間位こうなってしまう… 医者になりたくてなった筈なのに 他人のために自分の時間を使って助けられる、本当に素晴らしいお仕事なのに 「苺華…行かないで…」 自分の事ばかり考えてしまう… 「藍子?呼んだ?大丈夫?」 はっ、と気がつくと30分くらい経っているだろうか… 外から苺華の声がする 「大丈夫!…もう出るかな、十分温まったし…」 私は湯槽から立ち上がり脱衣所の扉へ手を掛けた…
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