第5話

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もし、私が蓮さんにそれを問えば 「バカなこと言ってんじゃねぇ」 って鼻で笑われるに違いない。そして、窒息しそうなキスをされて、私には考える余裕すら無くなってしまうんだ。 多分それも蓮さんの分かりづらい優しさに違いない。 ちょっと荒療治だけど、蓮さんはそうすることで私の不安を取り去ろうとしてくれているんだと思う。 だけど、私は知っている。 幸せな時間は長く続かないことを……。 望んだ通りの人生なんて送れないことを……。 だからこそ私は不安を抱く。 煙草の煙をゆっくりと吐き出す蓮さん。 その漆黒の瞳は頭上に広げる空を見つめている。 その視線がふと私に向けられた。 その刹那、無表情だった顔が優しく綻ぶ。 それを見た途端、私は蓮さんに駆け寄り抱きついていた。
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