第2話

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―10年後の地球― 大図書館社会情報視聴棟にある巨大ディスプレイに、あるニュースチャンネルの放送が流されている。初めてカヴィヌス教の教祖が姿を出したという。以外にも若き教祖は綺麗なフードをかぶって目元も隠し白の装束を身にまとっており、様々な民の人々に囲まれて演説をしている。隣には補佐をする上級教徒もいた。 「我々は再び天候の異変によって神に試されているのである。」 「再び大洪水が必ず起きる。そして、選ばれし人の子は他の星に生き続けることができるのである。」 「我々は今、宇宙へ羽ばたくための箱舟を造っており、このコロニー内全員の命を保証する。」 (ィエーイ!教祖様ぁっ!) テレビの中で民の信者・教徒たちが狂うように手を上下させながら何度も宗教的な言葉をはっしている。 現代のこのような熱のある中、一人の大和域の女子高生が資料書籍棟の誰もいない地域関連資料室で棚をガン見している。 「えーっと、中華域に関する書籍…あ、あった。」 さっと見つけた本を取り出し、目次を見て前の方を開いているようである。 「三皇五帝時代。…黄帝と炎帝。」 …炎帝神農の子孫の蚩尤は71の兄弟と魑魅魍魎・雨師風伯と共に黄帝と戦う。黄帝はこれを倒し天下統一をなす。蚩尤の死体は2度と復活しないよう解体され二つの塚に埋められる。黄帝は以後民族の反乱が起こる度に、蚩尤の絵を描きこれを掲げ、蚩尤が蘇ったと感じた恐怖で民はこれに跪き、そして崇拝して蚩尤の怒りを買うまいとした。 「って、これだけ?やっぱり日本語版じゃこんなもんか~。まあ、そもそも中華域の書物は殆どコロニーにないしな…。」 「…帰るか!」 あまり収穫はなかったのか直ぐに手にした本を元の場所に戻した。誰かが置きっぱなしにしたのか最近のものであるとわかるような図書館用の新聞が机上の端にあったのが見えた。その新聞には「カヴィヌスの箱舟」というタイトルの文字が書かれている。 (私は絶対にこの地球から離れない。急に消えたお父さんの真実を見つけ出すまではね。) 少女はこの新聞記事を睨むように見ながらこの部屋を出た。
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