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この少女の名は柳茉梨華(やなぎまりか)といい、かつて中華域を混沌の世に導いた邪神蚩尤(しゅう)の主である。
「よっしゃーっ!」
邪神の一柱である蚩尤がアジア系集団住居アパートの部屋で大きな声をあげた。どうやら今オンラインゲームのクエストが達成したらしい。素早く共戦者にチャットしている。打たれた言葉がきれいに画面からキャラクターとしてしゃべっている。
『さっすがハルアキ!よくあんな敵を倒したな。いい友だよな、俺たち!』
相手のアバター「ハルアキ」から返事がきた。
『ああ、そうだなシュウ!次はレベル5のクエストに挑もうな!』
「ただいまー。」
ゲームエンジョイ中に茉梨華が帰ってきた。とても機嫌のいい蚩尤は元気に答えた、が、体はPCに向いたままだった。
「お帰リングドーナツ!」
茉梨華の顔色が変わり、大丈夫かと言っているような表情で彼を見る。
「は?」
「え、知らねえの?リングドーナツ!?」
真面目な顔で驚く蚩尤。呆れたように茉梨華が答える。
「フツーのよく言う一般的ドーナツでしょ。」
「なんだ、わかんじゃん。」
俺、心配したぜ…ていう感じに言い返す蚩尤がウザいと感じた茉梨華だった。
(一体こいつをどうやって邪神と見ればいいのか私にはわかりません。現代に生きる悪神はこんなにもネト充で意味不で良いのでしょうか、いや良くない。)
「なに、変な目で見てんだコノヤロー。」
「あんたさ、たまには勉強したら?昔の知識じゃ…。」
「そんな暇があったら筋トレかゲームしていた方がいいね。」
「それ、自分の趣味だけじゃん。昔の武器制作の趣味はプラモデルにしか活きていないのね。」
「ん?悪いか?」
マジで馬鹿だなあと再確認した茉梨花のイラつき度が更に上がった。
「てかなんでこんなにもイケてない神と一緒にいなくちゃなんないわけ?自殺する人の気持ちがわからないでもない程。」
変わらず真面目に蚩尤は答える。
「いや、てめえは死ぬな、いいな!?俺の夢がなくなっちまう。」
「夢ってどうせ世界征服とかでしょ、幼稚ね。現実見ろ二次元ネト野郎。」
「いいだろ、ほっといてくれ!」
今度は蚩尤もヘソ曲げそうだ。茉梨華は遠い目でどこかを見ていう。
「実際、この世界は怪物が大量にいて、他の神にだってこの星を捨てたものもいるんでしょ。人類も宇宙に逃げたがっている。」
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