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着替えて、急いでミツとホテルを出た。
朝のホテル街は夜の淫靡さはなりを潜めて、それがかえって後ろめたさを感じさせる。
朝の空気は何か透明で、7月の割には結構涼しい。
何をしゃべったらわからなくて、ミツと渋谷駅の方向に向かう。
そんなモジモジしていたら、いつのまにスタバ前に到着してしまった。
ガラス越しにもう亜利沙が到着して、コーヒーを飲んでいる姿が見えた。
「友達もう来てる?」
「あ、はい」
「じゃあ、もういきな」
ミツはそう言って、私の背中を押し出すように前にそっと押した。
1歩足が出る。
そのまま歩き出すしかないような空気。
私はおずおずと歩き出す。
途中で振り向くと、ミツはにこっと笑って、軽く手を振ってくれた。
私も軽く手を振った。
ミツは安心したように渋谷の人混みの中に消えていった。
何だか後ろ髪ひかれるような、ものすごい寂しさを感じながら、私は歩調を速めた。
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