第1話

9/15
前へ
/15ページ
次へ
「あっれー?成さんじゃね?」 この頭が軽そうな声… 私が一番聞きたくなかった声だ。 ぎぎぎっと音がなりそうなくらいぎこちなく、声が聞こえた方へ顔を向けた。 「あっ!やっぱり成さんじゃん!」 「うわ…」 この馴れ馴れしいやつは大崎奏太(おおさきそうた)。 ちなみにこいつも小学校から同じである。年は一つ下だから後輩だ。 それにしてもなんで… 「こんな早くに成さんに会えるなんてラッキーだなー やっぱこの高校にして正解。」 満足気に話す奏太に対し、成はため息をはいた。 「なんでよりにもよってこの高校なの…」 高校に入ってやっとこいつから離れられて平穏な生活を送れていたのに… また2年間も同じ校舎で過ごすなんて! あり得ない… 「なんでってそんなの決まってるじゃん」 いつも軽い雰囲気を漂わせている奏太が急に真剣な目をして言った。 「……は?」 とっさに意味を理解出来なくて間抜けな返事をしてしまった。 「こーいうことっ」 さっきの真剣な目はどこにいったのか、またいつもと同じような軽いノリで言いがばっと抱きついてきた。 「うわっ離してよ 変態!離して離して離して!」 ばたばたと暴れてみるが力でかなうわけがない。 奏太は余裕の笑みを浮かべながらどうしよっかなーなんてむかつくことを言っている。 こういうことしてくるから嫌いなんだっ! 「てか成さん小さくね?縮んだ?」 失礼なことをにやにやしながら聞いてくる。 「縮んでないからっ!今年5ミリも伸びたし!」 腹立つ。もうほんとなんなのこいつ。 今だに奏太の腕から逃れられないまま、憎しみをふつふつと沸き上がらせていると、体が後ろに引っ張られた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加