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───あなたの記憶を探します。
それを見たのは偶然だった。
いつものように学校から帰る途中、近道をしようと入った小道に、その店はあった。
看板には『Cafe Memory』と書かれている。
特に変わったものはない。
むしろ、何処にでもありそうな普通のカフェだ。
けれど私は看板の横の、
───あなたの記憶を探します。
という言葉に釘付けになった。
カラランッ
無意識に私はカフェのドアを開いた。
中に入ってみると、紅茶の良い香りがした。
「何でだろう・・・すごく落ち着く」
店内はアンティーク風になっていて、壁やテーブルに飾られた絵と花が、さらに雰囲気を出している。
私はドアの前で、立ち止まってしまっていた。
しかし。
「・・・ここは、何らかの悩みを抱えるものだけが見つけられる場所」
高校生にしてはやけに大人っぽい。
「っ・・・!?」
不思議な力を持った。
「それも、記憶に関わる強い思いを持つものだけが、来ることができる」
漆黒の髪と瞳を持つ、彼が現れた。
「いらっしゃいませ」
お辞儀をした彼は、微笑みながらこう言った。
「───あなたは何色の記憶を持っていますか?」
これが彼との出会いだった。
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