魔王に拾われた男の子

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「ルアン、ただいま」 「おかえりなさい」  夢中で読んでいる間に、ラケルの仕事も終わったらしい。本を読むルアンに満足気に頷いて、傍によってきた。 「読めるようになったか」 「はい。でも……えっと、わからなくて。文字はわかるけど、言葉が」 「なるほど。単語がわからないのか……ちょっと待ってろよ」  そう言って再び部屋を出ていってしまう。十分ほどして、分厚い本を抱えて戻ってきた。 「これは辞書って言って、言葉の意味を調べられる本だ」 「言葉の意味?」  てきとうなページを開いたのを見せられて、その文字の多さにびっくりしてしまう。今読んでいたものよりもずっと文字が小さい。 「例えばこれ。『よる』って太い文字で単語が書いてあって、その後に『太陽が沈んでいる間の時間』とか色々と書いてあるだろ。これが意味だ」 「全部の言葉がわかるんですか?」 「全部ではないだろうけど、ルアンが今後言葉がわからなくて困ったときは大体これで解決すると思うぞ。本を閉じると紙の側面に線と、その上に文字表の順に文字があるだろ。線の中にあるやつはこの文字から始まるってことだから、調べるときにはここを見るんだ」  試しにさっきわからなかった言葉を探してみる。その意味の中にさらにわからない言葉が出てきて、それをまた調べる、といった感じで少し楽しくなってきた。 「ありがとうございます。ラケルさん」  そう言って笑顔になるルアンに、ラケルもつられて笑った。今後王兵として必要なことを身につけてもらうためにしていることではあるが、それを楽しんでもらえるならラケルとしても嬉しいことだ。 「じゃあそろそろご飯だろうから片付けるか」 「はい!」
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