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結界の外で待っていると、ラケルはその後の訓練をテキパキと指示してすぐにルアンの元へ寄ってきた。
「あの、いいんですか……?」
「ああ、元々は休みみたいなもんだからな。それに訓練くらいあいつらだけでこなせる」
身支度を整えるために一度ラケルが部屋に寄って、ルアンもミエによっていつもの質素な服ではなく外向きの服へ着替えさせられた。紺のブレザーはボタンが多く、気になっていじってしまう。
「ふふ、あまりやりすぎると取れちゃいますよ」
そう言われて、ぱっと手を離す。きれいな服を壊してしまう訳にはいかない。
ミエにラケルの部屋まで送ってもらったものの、楽しんできてくださいと立ち去ってしまった。中へ入るか否か迷っているうちに、扉が開く。
「お待たせ」
ルアンを迎えに来た日と同じ王兵のコート。仕事だと言っているときはあまり着ている印象はなく、動きやすさ重視の服を着ているから、このコートの役割がルアンにはいまいちよくわからなかった。
「ん? どうした」
「いえ……」
首を横に振るルアンに、そうかと微笑む。だいぶ表情や会話も増えてきたが、こういう遠慮がちなところはなかなか変わらない。無理して踏み込むのも良くないような気がして、いつもルアンが近づいてくるところまででラケルも足を止めてしまう。もう少し慣れてくればこんなことも無くなるだろうか。
「行こうか」
しかし、外へ出かけることへの興味はあるようだ。ラケルの言葉に、笑顔で頷いてくれた。
「はい!」
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