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王城の目の前には広い道が真っ直ぐに伸びていて、さまざまな店が軒を連ねて活気に溢れている。
「わ……」
多くの人や馬車が行き交い、歌を歌ったり楽器を演奏したりしている人もいる。最初街を歩いたときには余裕がなく見ることができていなかったその光景に、ルアンは圧倒された。
「あ、ラケルさん! こんにちは」
すれ違う人々の多くはラケルを見て挨拶や会釈をしていて、ラケルも笑顔でそれに応える。その少し後ろにいるルアンにみんな不思議がっているようだったが、直接問われることはなかった。笑顔で微笑みかけられても、緊張して上手く相手の顔を見ることができない。
その様子を見て、ラケルがこちらを振り向く。
「怖いか?」
「あ……えっと……」
言葉がうまく出てこない。怖いわけではない。ただ、挨拶を返したくても喉につっかえてしまうし、恥ずかしくてすぐに顔を背けてしまう。
「まあお前が話すのは俺とシーシャたちくらいだからな。人見知りも無理はないか」
ひとみしり、とはなんだろう。きっと今の自分のことを言っている言葉。たくさん辞書を引いているのに、わからない言葉はまだいくらでも出てくる。よく辞書を引くルアンに、「言葉の意味を想像するのも大事だ」とラケルは言うのだが、なかなか難しい。
売っているものはルアンにとってはどれも新鮮で、色々なことに興味を持つルアンにラケルはどれも丁寧に説明した。クッキーというお菓子があること、今子どもたちの間ですごろくという遊びが流行っていること、配られている風船には空気よりも軽いものが入っていること。
今までルアンに合わせて立ち止まっていたラケルが、一つの店を指差す。
「このお店が目的地」
「武器ですか?」
「そう、お前持ってないだろう? 魔法だけでも充分なんだが、使えるに越したことはないからな」
そう言って中に入っていくラケルに続くと、大柄な男が出迎えた。褐色の筋肉質な肌に薄手の白シャツが良く似合う。
「いらっしゃい。突然来るっつうから驚いたぜ」
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