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昨夜は寝られるか心配だったのだが、かなり熟睡していたようですっきりとした朝を迎えた。
脇のテーブルに用意されていた服に着替えて、起きたら使うように言われた枕元の魔法陣に手を触れる。
魔力消費することなく魔法陣が起動し、ラケルと念話が繋がった。
『おはよう、ルアン。寝れたか?』
『おはようございます……はい、よく』
『今行くから待ってな』
返事をすると、じゃあ、と念話が途切れる。恐らくラケルの魔力を使って媒介しているのだろう。ルアンから念話を使うこともできるのだが、ラケルはルアンに魔法を使わせることを極力避けるつもりでいるようだった。
リビングに出て座って待っていると、シーシャとラケルが入ってきて立ち上がる。朝食が入っているのであろうバスケットと何冊か本を持ってきていて、首を傾げる。
「言ったろ、勉強させるって。とりあえずは魔法の基礎とこの国のことからな」
恐らく文字が読めると思って言ったのだろう。申し訳なくなって、目を逸らす。
「すみません……文字、わからないです」
ラケルは少し呆然としてからそこからか、と頭をかいた。
少量のパンを食べて、文字表を使って一つ一つ発音を教わる。丸と直線を用いた記号を、実際に書きながら頭に叩き込んでいった。
「この国の文字は見分けは少しし辛いからな」
線の長さや丸の位置で発音が変わってしまう。一方で文字一つにつき発音は一つしかないため、覚えることさえできれば文章は読み書きできるようになる。
「ル、ア、ン」
自分の名前だけは見ずに書けなければ苦労する。ラケルがまず教えたのは名前の書き方だった。
「うん。じゃあ次は……」
ひたすら単語を書き連ね、少しずつ慣れていく。ラケルが王兵の仕事で退席してからも、シーシャに見てもらいながら覚えていった。
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