第5話

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「聞きたいことがあるんですけど。」 ジッと見据えると、 急に笑い出す。 あとから走ってきたマネージャーらしい人が、 「なんですか?あなた。」 俺に聞く。 「ああ、いいんだ。 この方は映画監督の赤坂さん。 昔からの知り合いで、 これからの活躍を期待されてる。 今日はもうここでいいよ。 お疲れさま。」 マネージャーらしい人にそう言うと、 「行きましょうか。」 そう言って俺について来いと言わんばかりに、目で促す。 その仕草に、何もいわずあとに続いた… すぐ目の前のマンション。 そのエントランスを抜けて、 手慣れたように暗証番号でオートロックを解除する。 「ここに住んでるんですか?」 だからか。 歩いて来てたのは。 「ここは事務所が契約してる部屋です。 撮影所に入り浸りになってる役者のために、 時間を掛けないですぐに休めるようにと。 ここに入れるのが夢だった… ここは主役級の人しか入れないから。 でも、入ってみると、 なんでもない、普通の部屋ですよ。 実際住んでるのは違う場所なんですけど。」 最上階の部屋。 鍵を開けて中にはいると、 なんでもない普通の事務的なソファーがふたつ、 向かい合わせで並んでいるだけ。 ベッドルームは別にあるんだろう。 いかにも打ち合わせとかの為にあるような、 部屋だった。 「どうぞ。 缶コーヒーでいいっすか? 基本、なにもしないんで。」
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