やっちゃった!?

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会話の半分が成立しない虚しさなのか、坂井は 「って、全然聞いてないし」 と、独り言のようにポツリと呟いたけれど、本音を言えば、私は聞こえているのをわざと無視したのだ。 上司として、一度ならず二度までも酒に飲まれたという醜態を見せる訳にはいかない、と考えるだけの理性は残っていて、大丈夫じゃないでしょ、という言葉には返答が出来なかった。 私は、ほぼ強引に坂井に別れを告げた後、少し目が回るなと思いつつ、大通りに向かった。 楓は、大通りから1本奥の通りにある飲み屋街に構えられた店舗だ。 この時間帯に行き交う人の多くは、顔が赤いご機嫌な人達ばかりで、中には一人で歩くことが出来ずに連れの介助を受けている人までいる。 私も気を抜けば倒れそうなんだけどな、と思っていた時、前から歩いてきた三人組のサラリーマンの一人と私の肩がぶつかった。 「きゃっ!?」 景色が勢いよく流れていった。
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