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近藤は真面目な顔をしている。
「用件をいう。
忠丹国の劉 天風な、生きてる。
というか、誰も死んでないんだ。」
瀬織はやはり、と思う。
「劉公才、杉崎尽詩、もしかしてクソガも?」
「ああ。クソガは忠丹国で、意志の鎧の人体実験を受けてる。もはや、日本人なら誰でも殺めたいだけの化け物に、なっているのでな、そのために実験に協力してる。」
瀬織が一番気になるのは、天風だ。
仙丹を飲んで意識不明になっていたのだ。
死んでないと言うことは…
「天風は、仙人化した、てこと?」
近藤はコーヒーを飲み干した。
「仙人化しきれなかった。
肉体は維持したままだ。
何らかの特異性は、発現しているはずだ。」
瀬織は、察した。
近藤ケイには詳細がわかっていないということは、彼には届かないトップシークレットになったのだろう。
瀬織は、そこまでは、おおよそ予測の範疇である。
「それだけを言いにきた訳ではないでしょ?」
「ああ。本題は、まず、劉公才の処遇。
今は、才能のある人材を探すため、飛び回っている。」
「あら、予想外。」
「軍部のヤツラ、仙丹を杉崎にバンバンつくらせて、片っ端から被験者に飲ませてる。
数打ちゃ当たる、というわけさ。」
瀬織は眉をひそめた。
「何人か死んだわね。」
「10人は死んでるはずだ。杉崎に気を吸いとられる役割の人間もいて、死にかけの人を30人以上はつくってる。」
「もはや、悪魔の実験ね。私たちも陣平に色々しかけてるから似たようなものだけど。」
「なにせ、敵でもない自国の人間を犠牲にしてるんだから、本末転倒だ。
自国民を守るのが軍隊だろうに。」
瀬織はコーヒーポットからカップにコーヒーを注いだ。
「で、本題は、どれ?」
近藤は、身を乗り出した。
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