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ふっ、と息を吐いたあと。
「もし、冴島先生が郁ちゃん傷つけたら、
私、許さないから。
その時は、ちゃんと相談してね?」
そう微笑む采女の黒曜石のような瞳が、
怪しく私を射抜く。
「ねぇ……」
「なぁに?」
え、なんで昨日エラい目あったこと知ってるの?
え、なんで話してないのに冴島先生出てくるの?
え、シキガミさんて………誰?
采女に聞きたいことが多々あるけど、怖いもの見たさのような、見たくないような。
色んなごちゃまぜな気持ちを、
全部飲み込んで。
「………ううん、何でもない。
采女、ありがとう」
曖昧に微笑み返したら。
「郁ちゃんの、そういうところ大好き」
そんな私もお見通しなんだろう。
全部包み込むように、ふわり。
頬を緩ませて、私を優しく見つめてくれた。
入学して同じクラスになった采女は、私の高校では有名人だった。
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