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僕は差し伸べられた希望にすがりつくように女性を見つめる。
女性は優しい微笑みを浮かべながら僕に言う。
「お主がその気なら妾が瀕死になっておる時にスライムに捕食させておったろう?それをしていないということは敵対心はないということじゃ。それに妾をベッドに寝かせてお主が床で寝てるのが分かったときにお主の性格もわかったからのう。」
そういって女性は僕を胸に引き寄せる。
柔らかい感覚に包まれて恥ずかしがる僕を無視して女性はまた語る。
「ほら、妾の心臓の音が聞こえるか?お主のおかげで妾の心臓はこうやって動いておる。お主は妾の命の恩人じゃよ。」
僕は一度羞恥心を押し殺して耳を傾ける。
聞こえる女性の心臓の音は元気に躍動しており、どくん、どくん、と元気に動いているのが分かった。
「....そんな命の恩人であるお主に頼みがある。」
そこで女性は真剣な声音で僕にお願いする。
僕は一度女性の胸から身体を離しスライム君たちに背を預ける。
女性の顔を見ると声だけでなく表情も真剣であった。
僕は一度佇まいを正して女性に聞く。
「なにですか?」
女性はそこで一度自分の精神を落ち着かせるように深呼吸を一度含み僕に頼む。
どこか悲しそうに。
「妾の仲間....ダークエルフを助けてほしい。」
ある日、新たにダンジョンマスターが誕生した。
その者、頼りない見た目と裏腹に圧倒的暴力と知力を備えていた。
しかしその者、決して悪ではなかった。
幾万の部下で数多の街を焼き払った。
幾万の知略で数多の軍勢を退けた。
しかし決して善人は殺めず、しかし悪人には一寸の容赦もなかった。
そんなダンジョンマスターの始まりの一ページは本当に些細なことから始まる。
『ダンジョンマスターを生成しました。』
《そうか、ご苦労である。》
『いえ、恐れながら質問しても?』
《申してみよ。》
『なぜダンジョンマスターを作られるのですか?』
《理由なんぞない。強いて理由を付けるとするならーーー》
《ーーーー神の暇つぶしだ。》
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