気苦労その2

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「む、もうこんな時間であるか。」 「そうだね、じゃあ行動開始だね。」 僕らはそういってダンジョンの出口へと向かう。 アーリアが洞窟を出て、スライム君たちが先に出る。 そして僕も洞窟を出る....。 「グヘッ!?」 ことはかなわず、むしろ何かにぶつかった。 アーリアたちは僕の奇声を聞いて振り返って驚愕する。 そりゃあ、振り返ったら奇声の主である僕が壁にぶつかったかのように顔面を何かに押し付けていたらそうなるよな。 「な、なにをしておるのじゃ?」 「いや....なんかここに見えない壁が....。」 アーリアは僕が言ってる事が理解できないようで僕の元へ手を伸ばす。 僕もそれを取ろうと手を伸ばすが、やはり見えない壁にぶつかり手は直角に曲がる。 アーリアも何かを感じ取ったようで僕の手を完全に握る。 そして引っ張る。 「いぃたたたたた!」 しかしやっぱり壁を抜ける事無く、僕だけが痛い思いをすることになった。 「....なんじゃこれ?」 「いや、僕もわかんない。」 アーリアは僕の手を離して何かに触れようと手を出し入れする。 しかし何も触れることなく手は空を切るだけである。 「ふぅむ....ダンジョンマスターであるお主にだけ働きかけているようじゃな。」 「へっ?」 「間違いないと思うぞ?なにせダンジョンから出れないように見えない壁があるしのう 。」 そういってアーリアは僕の手をもう一度取る。 そして僕の手を洞窟の出口のギリギリまで持って来ると、握っていた手を開き指を伸ばしてみろという。 僕は言われるままに指を伸ばすと、言った通り指が見えない壁にぶつかった。 「むぅ....少し作戦変更じゃな。お主がこんな状態じゃどうしようもできんの。」 「うぅ....。」 「スライムたちは妾から指示を出そう。お主はもともと無関係なのじゃ。ゆっくり待っておれ。」 そう微笑みながらアーリアは僕に言う。 僕は何も言い返せずそのまま俯く。 アーリアは僕に一度軽く手を振るとそのまま森に進んでいった。 1人になった僕はアーリアたちを見送った後トボトボとマスタールームに戻った。
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