story 椎名

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退院までの数週間…… 俺は灰人にでもなったかのように、何もする事が出来なかった…… ただ、憎いと 許せないと その憎悪ゆえ、ぬくぬくとベッドに転がる自身さえも嫌悪した…… 『母さん…』 『なぁに?』 嬉しそうな母さんに胸が痛かった 『俺は何の為に生きているの?』 『……』 濡れた頬が冷たいと感じるには時間が掛かった…… この冷たさを感じられる己の温もりが恐ろしかった…… ユキが死んで俺が生きた、それを喜ぶ両親が許せなかった…… 『俺、家を出るよ……』 『司…』 すぐ隣で母さんが泣いた 行かないでと泣いた 居なくならないでと懇願した 『貴方はユキなのよ……?』 最後、病室を抜け出す俺に綴った言葉だけが俺の耳に届いた。 『ごめん……』 手にした着替えだけを抱え、俺は両親が居る ユキが居た世界から消えた。 ユキの居る世界に戻りたかった 何も無かった事にしたかった 処理する事の出来ない思いを受け入れられない現実から逃げた…… ただ、それは逃げただけだと理解するのには時間が掛かり 憎んだ父からの援助を受けながら学校を卒業し 何も出来ない自分の弱さを知らしめられた……
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