story 椎名

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自宅に着いた司はジャケットをハンガーに掛け、ソファーに飛び込んだ…… 「何か、目眩く……だな」 この数日の出来事を思い返し、苦笑する 亜夢が現れ ただ、助けた その日から、その笑顔に惹かれた 「あぁ、ユキに似とるんか…」 華やかな笑顔は昔のユキを思い出す 肘掛けに置いた両足を組んで、腕を顔に乗せる 記憶の中 ユキは笑ってた 「ユキ……」 呼ぶ 「……もう、居ないのか?」 いつも聞こえていた声は聞こえない。 「なぁ、ユキ」 瞼を閉じても思い出せない…… 『椎名さん!大丈夫!』 代わりに弾けるような笑顔の亜夢が現れ、励ました…… 「…ユキ、もうええんか?」 返事はない。 「ごめんな……」 ありがとうと、付け加えた。 自分の代わりになってくれてありがとうと、亜夢に出会えて救われた向き合えた…… 同じく救いたいと、力に成りたいと 笑って欲しいと思う事が嬉しくて歯痒くて 「亜夢 好きだ……」 真っ暗な視界に映る亜夢を見ながら呟いた。
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