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秋の空は、あっという間に陽が落ちる。
先ほどまで茜色に輝いていた空は、もう真っ暗だ。
蛍光灯が明るいマルヨシのガラス扉を開けると、リカさんが俺を呼び止めた。
「坂井。ちょっと待って!」
「何すか?」
「コロコロしなきゃ!
あんた猫飼ってるでしょ。服にユキちゃんの毛が付いてるかもしれないじゃない。
万が一、製品に付いてしまったら異物混入になるから」
「コロコロ……?」
扉を抜けて直ぐのところに、来客用の消毒アルコールと粘着ローラーが置かれている。
「これよ。これ!」
どうやら粘着ローラーのことらしい。
リカさんはそれを取って俺に見せた。
まさか、リカさんの口からそんな可愛い言葉が聞けるなんて意外だった。
「背中やってあげるから、あっち向きなさいよ」
「あ、ども」
「ほら、やっぱりユキちゃんの毛が付いてるじゃない」
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