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いつも服を着る前に確認してはいるが、白い服だとユキの白い毛は見落としてしまうらしい。
ほら、と見せられた粘着ローラーには、ユキの毛が三本ついていた。
「はい。前は自分で出来るでしょ。ちゃんとやりなさいよ」
「リカさんは?やりましょうか、後ろ」
「あぁ、じゃ、お願い」
背を向けたリカさんは、首の後ろを撫でてロングの黒髪を前に流した。
ほのかに甘い香りが漂ってくる。
「あ、うなじ色っぽい」
「バカなこと言ってんじゃないわよ。早くしなさいよ!」
「思ったことを言っただけじゃないすか。
あ、そだ。リカさん、俺が頼んだ通り……」
「分かってるわよっ!」
昨夜、頼んだ件だ。
俺が工場内を調べている間、リカさんには工場長を事務室で足止めしてもらうことになっている。
俺の言葉を遮ったリカさんは、「行くわよ」と不機嫌そうに歩きだした。
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