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「お疲れさまです」
「あぁ、お疲れさま」
事務室に入ると、ひとり奥のデスクで座っていた工場長が立ち上がった。
事務員は既に帰ったようだ。ここに着いたとき、ばらばらと工場から出てきた従業員の姿を見た。
おそらく、工場に残っているのは数人の筈だ。
「前の不良品ばかりだった製品のチェックなんですけど――。
品質管理部は?もう帰りました?」
「いや、責任者はまだ残ってる筈だよ。行こうか」
工場長は、自然にリカさんの腰を抱いた。
これが欧米人なら、女性をエスコートするスマートな仕草に見えるのかもしれないが、工場長から感じるのはねっとり絡みつくような嫌らしさだ。
しつこい雰囲気が全面に現れている。
俺の苦手なタイプだなと思った。
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