動く心

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*** 「お疲れさまです」 「あぁ、お疲れさま」 事務室に入ると、ひとり奥のデスクで座っていた工場長が立ち上がった。 事務員は既に帰ったようだ。ここに着いたとき、ばらばらと工場から出てきた従業員の姿を見た。 おそらく、工場に残っているのは数人の筈だ。 「前の不良品ばかりだった製品のチェックなんですけど――。 品質管理部は?もう帰りました?」 「いや、責任者はまだ残ってる筈だよ。行こうか」 工場長は、自然にリカさんの腰を抱いた。 これが欧米人なら、女性をエスコートするスマートな仕草に見えるのかもしれないが、工場長から感じるのはねっとり絡みつくような嫌らしさだ。 しつこい雰囲気が全面に現れている。 俺の苦手なタイプだなと思った。
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