動く心

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「でも、私は事務室に戻るわよ?」 「分かってますって」 リカさんがいいと答えたからだろう。 工場長は嫌そうな顔をしたが、何も言わなかった。 俺は二人が立ち去ってから品質管理部を見回した。 部屋の隅に、マジックで不良と書かれた段ボール箱が、いくつも積み重ねられている。おそらく何度も使い回されている段ボール箱だ。大きさがバラバラのそれは全て角が潰れ、形が崩れている。 よく見ると、隅に製品番号も走り書きされていた。 俺が調べているのは、KVとYL、それにUFだ。 段ボール箱は七つあったが、その製品番号が書かれたものは無い。念のために中身をチェックしたが、案の定表示通りのものしか入っていなかった。 次にパソコンの横に立ててあるファイルに目を通した。そこにあったのは仕様書やら、ショーツの畳み方やら、出荷方法やらが纏められたものばかりだった。
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