動く心

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廊下が消灯されている為、すりガラスから漏れた光がやけに明々と輝いている。 あの中でリカさんは、工場長が事務室から出ないよう足止めしているのだ。 ふと、腕時計に目をやった。 急いでいるつもりだが、俺が工場内を探り始めてから、もうすぐ十五分が経つ。 なかなか戻らない俺を、工場長は不審に思っていないか――。それを無理に足止めしようとしてリカさんは……。 ふと「それって川崎さんとふたりでイチャイチャやってろってこと?」と言っていたリカさんの言葉を思いだした。 俺は、どうにかしているのかもしれない。胸がざわついた。 階段を上がりかけていた足が、事務室へと向かっていた。 「ここはどうかな?」 「う……ん」 事務室の中から二人の話し声が聞こえてきた。 「それともこっちの方がいいかい?」 「私は川崎さんがいいなら、もう早く入れてほしいんです」
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