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翌朝、
結局一行も書けないまま、
敬介くんはパソコンの前で寝落ちしていた。
キーキーキーキー。
『焼鳥』は、
相変わらず朝から元気に鳴いていた。
いつもなら、
カゴから出して遊ぶ敬介くん。
でも今日は違った。
とても気分が高揚していた。
何をしても許される、
そんな狂ったテンション。
敬介くんは、
『焼鳥』をカゴから出して、
いつも通り、
人差し指に止まらせた。
そしてここからはいつもと違う。
『焼鳥』を指に乗せたまま、
敬介くんは、
バッとカーテンを開けた。
朝の光が、
敬介くんの目に豹となって飛び掛かる。
それでも、
敬介くんは怯まない。
今度は戸を開けて、
その指を、
さっと、宙に振り下ろした。
パタパタパタ
キー!! キーキーッ!!
『焼鳥』の羽ばたく音。
いつもより逞しい、
『焼鳥』の声。
嘘だろ、嘘だろ。
「焼鳥ー!! 」
敬介くんは、
いまさら我に返った。
しかし、
追い掛けて捜す気にはなれなかった。
だって、
『焼鳥』がとても嬉しそうに鳴いたから。
敬介くんはこの朝、
いいことをしたという清々しさと、
罪の意識を、同時に痛感したという。
→次回予告:焼鳥空を飛ぶ編
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