380人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
クニが混ぜ返した。
「おまえが女の子とデートするときは、おれがつきそうよ。キスの方法を教えてやってもいいな」
デートの相手などいなかったが、タツオはいった。
「ふざけるなよ。クニなんかに教えてもらわなくても、ぼくだってキスくらい上手(じょうず)にできる」
タツオは生まれて初めてのキスを思いだしていた。あれは小学校低学年のときだった。1日に2度のファーストキスを経験したのだ。相手は瑠子さまと東園寺彩子(さいこ)。どちらの順番が先だったのか、タツオは覚えていない。
そのとき、こつこつとドアをノックする音がした。
「逆島、菱川(ひしかわ)、いるか」
月岡教官のざらざらとした声だった。
タツオは立ちあがると直立不動で返事をした。
「はい、先生」
最初のコメントを投稿しよう!