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 クニが混ぜ返した。 「おまえが女の子とデートするときは、おれがつきそうよ。キスの方法を教えてやってもいいな」  デートの相手などいなかったが、タツオはいった。 「ふざけるなよ。クニなんかに教えてもらわなくても、ぼくだってキスくらい上手(じょうず)にできる」  タツオは生まれて初めてのキスを思いだしていた。あれは小学校低学年のときだった。1日に2度のファーストキスを経験したのだ。相手は瑠子さまと東園寺彩子(さいこ)。どちらの順番が先だったのか、タツオは覚えていない。  そのとき、こつこつとドアをノックする音がした。 「逆島、菱川(ひしかわ)、いるか」  月岡教官のざらざらとした声だった。  タツオは立ちあがると直立不動で返事をした。 「はい、先生」
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