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 校庭中央に立つメインポールに日乃元皇国(ひのもとこうこく)の国旗が半旗となって揚(あ)げられていた。夏の午後で風は死んでいる。だらりと垂(た)れさがった紅白の旗のもと、白い棺(ひつぎ)が台車の上に載(の)せられていた。棺を包むのは東島(とうとう)進駐官養成高校の校旗で、紺地に白く東園寺(とうえんじ)家と逆島(さかしま)家の家紋が抜かれ、カザンの祖父が揮毫(きごう)した立派な筆文字で校名が躍(おど)っている。 「総員、敬礼」  狩野永山(かのうえいざん)校長の号令とともに、養成高校の全生徒が棺に納められた五十嵐高紀(いがらしたかのり)の遺体に敬礼した。制服のこすれる音は一発の銃声のように同時に響く。何人かの女子生徒がすすり泣いていた。 (泣きたいのはこちらだ)
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