シロイケモノ

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少年とも少女ともつかぬ、性別不明の人の形をした灰色の光。 静かに、だが確かな高揚を含ませた声音は、鳥の囀(さえず)りの様に清々しい。  しかし、白い獣がその声に応じることはなかった。 曇りなき瞳で、ただ真っ直ぐにそれを見据えるのみ……。 「あぁ、そうか……お前には意味が分からないよね、うん。気にしなくて構わないよ。これは独り言だ」  反応が不満だったのか、灰色の人形は少しばかり嘆息した後、白い獣に向かって一歩踏み出した。 瞬間、白い獣が初めて反応を見せる。 「きみは、まちがっている」  見た目に反した……いや、ある種で適正なその声音は、まるで初めて言葉を知った幼子の様に無垢であった。 「へぇ、そうなんだ……それで?」  対する灰色の人形は、不敵な笑みを浮かべて二歩目を踏み出す。 その際に踏まれた肉塊の一つが、酷い音を立てて潰し砕かれ、直ぐに消えた……。 白い獣の咆哮と、灰色の人形の哄笑が、虚無の戦地に響き渡る。 「ぼくが、とめる!」 「やってみろよぉ!!?」  先んじたのは白い獣だ。 流星の如き速度で戦地を駆け、白色の軌跡を残しながら、待ち受ける灰色の人形へと瞬く間に肉薄。 開かれた口より剥き出した、その純粋なまでに研ぎ澄まされた殺意の牙が、人形を貫かんと輝く。  しかし、灰色の人形とて黙ってはいない。 流麗な足運びで、牙がもたらす危険域より脱出。 それと同時に側面へと回り込み、瞬時に守りから攻めへと転身。 螺旋を描きながら放たれる拳が風を裂き、音を立てて白い獣の横っ面に叩き込まれた。  手痛い反撃を貰った白い獣は白い粒子を撒き散らし、乗算された勢いのままに真横に回転しながら吹き飛んだ。 直ぐ様、追撃の為に大地を蹴る灰色の人形……破壊的に踏み出したその速度は、吹き飛ばされる白い獣のそれより上! 金色の瞳でそれを捉えた白い獣は、直ぐ様迎撃のために体勢を立て直そうと四肢を動かす。 突き出した鋭い爪は大地を抉り、直線上の肉塊や兵器を引き裂きながら回転と勢いを弱めさせ、同時に派手な土煙を巻き上げた。 「はははっ、中々小賢しい真似をするじゃないか!」  その言葉通り、巻き上げられた土煙は目眩ましの煙幕に、壊れ飛び散る残骸は弾幕へと変化、灰色の人形を強襲する。
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