第2話 姉の遺産

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 まだ早朝の少し湿った空気の中でも、すでに暑くなる気配が感じられる。  …それはいつもなら気付く感覚なのだが、今日は全く感じられなかった。  ずっと、武善さんの言葉が響いている。  『かなり危ない』  『交通事故に巻き込まれた…』  『最期には君に会いたいんじゃないか』……。  投げ捨てるように自転車を置き、教えてもらった病室へと向かう。  部屋の前には一人の男の人が立っていた。
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