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帰りの車の中・・・
下を向いたままの美優を見て
「美優?話ってなに? ここならいいよ。他に誰もいないから」
「山中さん・・・」
美優がバッと顔を上げて・・・
真剣なまなざしで・・・
「仕事、諒より遅く始めて、諒より早く家に帰ることは出来ませんか?」
なんと!
「はい?? 無理でしょ」
どう考えたって、今のスケジュール考えたら無理!
そりゃあ日によっては、諒汰君より先に終わることは充分あるけど・・・
「無理なら・・・私・・・この仕事やめます!」
!!!
「は?なに言っちゃってんの? どうしたの? 」
驚く以外何も出来ない。
疲れているようには見えたから、休みが欲しいのかと思っていたのに、辞めるって・・・
でも美優の顔は真剣で、目の奥に本気が見えた。
そして話してくれた。
昨日家に帰ったら、1つの缶ビールがあったこと。
飲みかけだったから諒汰君が家にいると思ったのに、既に寝ていたこと
最近、同じ家にいるのにすれ違いばっかりで、話すらほとんどしなくなっていて、なんだかそれがすごく寂しかったこと
せめて温かい朝食をと思ったのに、冷蔵庫を開けたらなにも入っていなくて、なにやってるんだろう自分と思ったら悲しみがこみあげて来たこと
なんか全部が寂しくなって、苦しくなって、自分が仕事を始めたのは、諒汰君の側にいたかったのと、諒汰君が笑顔で輝くのをサポートしたかっただけだと・・・
だから決めたと・・・
諒汰君にちゃんと温かい朝食を出してあげたい。
夜も、明かりのついた部屋に出迎えてあげたい。
と・・・
それが出来るのなら、昼間仕事している時間に休憩は、いらない。移動中に休むから、昼間はギッチリ仕事入れてかまわないから
と・・・
それが無理なら、辞める・・・
と・・・
ふざけているようには見えなかった。
言い終わった美優は、下唇を噛みながら、必死に何かをこらえているようだった・・・
私1人じゃ決められない・・・
「美優?すぐにどうこうは出来ないよ。社長に相談してみるから、今日はゆっくり休んで」
そう言って美優を家に帰した。
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