始まりと終わりの途中

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 青年は火を放った。未来に向けた、希望と絶望の炎を。  少女の研究所を焼き払ったのだ。青年には他に方法が思い浮かばなかった。  自身のすべてだったものが燃えゆく様を見て、少女は絶望し、叫び喚いた。  青年への憎悪があふれ、我を忘れて彼を殺しにかかる。  ──襲い来る魔術をかわし、青年の剣が少女を貫いた。鮮血が舞い、地へ滴る。  少女は死の間際まで彼への恨みと生への執着を口にし続ける。「許さない。なんで私は幸せになれないの。死にたくない。」  青年は死にゆく彼女を抱き締め、涙を流しながらそれを聴いた。少女の瞳からも血の涙がこぼれていく。  恨み、哀しみ、憎しみ、後悔、愛。彼らの涙に込められた感情は、計り知れない。  彼女の言葉全てが胸に突き刺さり、酷く痛む。青年は逃げ出してしまいたい気持ちに耐え、少女の命が途切れる瞬間までその呪詛を聞き遂げた。
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