第1話

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もうっ、お好きなだけ笑って下さいまし。 今度こそマンション入り口へ向かおうとしたら、また“七海”と名前を呼ばれ、面倒げにもう一度振り返る。 「好きだよ」 ドキドキするというよりは、面食らった。 「おやすみなさい――っ!!」 どう返していいかわからず、あたしは猛ダッシュで入り口目指してかけた。 今日の服装、ワンピースにパンプスなのに…。 告白を受け入れた途端、和也さんからのこのラブアタック。 どうも調子が狂っちゃう。 でも、胸元にキラっと光ったそれを見て、ふっと口元を緩ませた。 この恋は、熱く情熱的に燃えあがる恋ではない。 ゆっくりと育てていく愛なのだ。 十代の頃とは種類が違う恋愛なのだ、と悟った。 そんなこんなでこの日、あたしは和也さんの妹から彼女という立場になった。
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