ツインテールとシュシュ(3)

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「バッカじゃないの!?」  3階まで吹き抜きの空間に声を響かせ、わたしはさっさと靴を履き替えに向かう。あっ、ユカ……。戸惑った様子でエリナもあとに続いてくる。2人も向かう方向は同じと思われたが、追ってはこなかった。  その週の残り2日(金・土曜)、杉本くんは学校に来なかった。自宅学習という扱いだと先生は説明した。杉本のしたことはまずかったが、過去に非行歴がなく、自ら退部を届け出るなど反省もしているのでこれ以上問責はしない。それが学校の方針とのことで、つまり退学という最悪の処分は免れたことになる。が……  あいつから野球取ったらなにが残んだ? 田中くんはそう口にし、エリナもさあと首を傾げた。わたしは中学時代の杉本くんを知らない。ただ高校進学を機に住まいを都内に移し、気兼ねなく野球に打ち込める環境を手に入れたはずだった。おれらの将来に希望はないみたいなことを前に彼は言ったが、少なくともはじまったばかりの高校生活は前向きに送っていたはずだ。いま、彼はどんな気持ちでいるのだろう。そう思うと居ても立ってもいられないが、かといって自分になにかできることがあるとも思えなかった。けれどせめて理由は知りたかった。周知事項の中では些細な口論が発端としか説明されなかったのだ。  その人がわたしの前に現れたのは土曜日の終業直後のことだった。たぶん名前は知られていないが、仮装コンに出たツインテールの小柄なコということでわたしは見つけやすかったのかもしれない。 「ねえ、あなた杉本の……」  その声には聞き覚えがあった。
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