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日に日に大きくなる「神の種」を見上げ、少年は満ち足りた心を笑顔に重ねて表した
何故だか二つの命が少年を見て笑ったような気がした
少年は更に笑みを深めた
これが幸福と言うことなのだと少年は温かくなる胸元に手を置いて部屋を後にした
心なしか足が軽く感じた
研究員の視線も、男の取り巻きである女達の視線も、今は何も気にならなかった
「フッフッフ
今日は随分機嫌がいいなァ」
「はい、凄く」
少年の満ち足りた笑顔に、男もまた上機嫌に独特の笑い声をあげた
男のこの笑い方が、少年は気に入っていた
普段の笑い方は、笑っているように思えないせいか少年はそれを酷く嫌っていた
そしてその笑い方をする時は、決まって研究員や取り巻きの女達がいた
少年は取り巻きの女達も嫌っていた
派手な化粧に鼻を刺すようなキツい香水の臭いを振り撒く様は、形容しがたい不愉快さがあった
研究員から漂ってくる、よく解らない薬品の臭いの方が遥かにマシだとすら考えていた
男と二人きりで居る時間とあの二つの命と居る時間だけが、少年にとって唯一寛げる時間であった
(幸せ・・・愛する・・・・・・これが、そう・・・?)
この時間を噛み締め、少年は頭を柔らかく包む男の手に「愛」感じて微笑んだ
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