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季節は巡る
双子は既に己の力だけで歩けるまでになっていた
転びかけた黒の髪を持った赤子を受け止めて、少年は小さく微笑んだ
あれ以来、運良く男とは出会さずに済んではいるものの、何時か会うのでは・・・と少なからず少年は不安になっていた
男はまだ少年と双子を探していた
取り巻きの女達の話が本当だったのか、あるいは逃げ出した少年を追い掛けて来たのか
少年には解らなかったが、捕まる訳にはいかなかった
「まみぃ?」
「あ・・・うん
何でもないよ・・・行こうか」
風の噂で男が近くまで来ている事を耳にした少年は、双子の手を取り研究所から持ち出した布で体を覆うと歩き出した
あと数日もすれば少年は19歳になる
出来る事なら、この日を男と双子と共に過ごしたかったが、それは己が叶わなくさせた夢だと少年は自嘲した
金の髪を持った赤子は、哀しげに目を伏せる母の姿に黒の髪を持った片割れを見た
黒の髪を持った赤子もまた、自嘲気味に笑う母を痛ましく思い、金の髪を持った片割れを見た
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