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双子は父と言える存在の事は朧気にしか覚えていなかった
何処かで産み出され、ケースの中から誰かと母を見ていた双子は、その誰かが自分達の父なのだと確信していた
しかし双子は父と言える存在が母を苦しめるだけの存在ならば、必要ないとすら考えていた
双子にとって母は絶対的な存在だった
優しく、温かく・・・少々言葉少なな印象はあるものの、双子は母を尊敬していたし護りたいとも思っていた
だからこそ母にこんな表情をさせる人物を心底怨んだ
今でこそ自由に歩けるまでに成長したが、これでは母を護る事など夢のまた夢だと双子は無力さに歯噛みした
うつ向く双子の頭にふわりと母の掌が乗せられた
母の掌の温かさには「愛」を感じていた
同じ土地に長く留まれない日々は確かに苦労が続くものの、母は双子が自力で歩行出来ない時から、それこそ今でも双子を抱えて「ナニか」から逃げているのだ
「ナニか」は「父」なのではないかと双子は何となく理解していた
(「父」が母さんをこまらせてる?)
(じゃあ「父」はわるいヤツ?)
生まれた時から双子はお互いが考えている事がなんとなく解った
だから母に聞かせたくない事は頭の中で考えるようにしていた
しかし本当に父が母を苦しめるだけの存在ならば、母はもっと必死になって父から逃げるのではないだろうか
時々双子には、母が迷っているように見えた
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