4人が本棚に入れています
本棚に追加
日が傾く黄昏時
少年は珍しく足を止めて来た道を振り返っていた
逃亡した日から、少年は男の事を忘れた事などなかった
だからこそ、苦しいのだ
逃げなければと理性が訴え、一目逢いたいと本能が叫ぶ
このまま逃げ続ければ双子は永らえるだろう
しかし一目逢いに行けば、おそらくもう二度と逃れる事は出来ない
もう少年には何が正しいのか解らなかった
「・・・ごめん、ね・・・・・・大丈夫・・・」
「大丈夫じゃねぇだろ」
突然耳に届いた懐かしい声に少年は勢いよく顔を上げた
変わらぬ巨躯にサングラスとピンクのフェザーコートを着込んだ出で立ちは、恐怖より先に安堵を運んできた
昔と同じように男の体温を感じたかった
それでも・・・と少年は双子を背に庇った
怖かった
男の事は疑いたくはなかったが、少年には事の真相を確かめる術を持ってはいなかった
ただ、双子を守りたかったのだ
一歩一歩、確かめるように少年に近付く
「おめェにゃ伝えなきゃならねぇ事がある」
数m離れた場所に立った男が、少年に語りかける
労るように、怯えないように
「その双子にはおれの血が入ってる」
最初のコメントを投稿しよう!