魔女ザルムホーファーの逃亡

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彼にとっての世界は、この小さな研究所の中だけであった 周りの大人達は皆一様に白衣とマスクを身につけており、中には眼鏡をかけた者もいた 顔はほとんど分からなかったが、しかし少年はそれを気に止めたことはなかった ここにいる大人達は、皆少年には優しかった 少年はそれが偽りであることをなんとなく理解していた 研究所の中を自由に歩きまわることだけが、唯一少年に許された行為だった 「フッフッフ こんなところに研究所があるたァ知らなかったぜ」 独特の笑い声が聞こえて、少年は扉の隙間からのぞき見た 少年は今年で11歳になる・・・と、研究員から聞いていた 一番体格の良い研究員が少年と並ぶと、ちょうど腰の辺りに少年の頭がくる しかし、だ 先ほど独特の笑い方をした男は、一番体格の良い研究員の倍は大きいのだ 鮮やかなピンクのフェザーコートを着込んでいるせいか、さらに大きく感じる 周りにいる研究員が男を視界に入れるや否や、どよめいた
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