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少年はその男が誰なのか知らなかった
というのも研究所の中にいた大人達は、少年に外のことを一切話さなかった
外に興味を持たれるのが芳しくないと思ったのか、それとも別の理由があったのかは分からない
それでも少年が初めて見た研究員以外のニンゲンに興味を示すのは、必然だった
「あん?
何でこんなところにガキがいやがんだ?」
「・・・・・・」
無言で、ただただ男を見つめる少年
黒とブラウンの混じらない瞳が、己では分からないような奥底にあるナニかを見ているようで、男は少しだけ居心地の悪さを感じた
しかし、何故だか目が離せない
見つめあっていたのは数分だったか、あるいは数秒だったか・・・
研究員が少年の腕を引っ張ったことにより、視線は強制的に切られた
「お前はもう部屋に戻っていなさい」
紡がれた言葉を、少年は少しだけ残念そうに受け取り踵を返した
別に研究員の言葉など無視してしまったところで問題はないのだが、あとが面倒だと思ったのだろう
少年の部屋は研究所の一番奥だ
窓のないあの部屋を、少年は嫌っていた
あの見知らぬ男が帰ってしまえば、また研究所を歩きまわっても問題ないだろうと踏んで少年は歩く
一歩、二歩、さん―――――どしゃっ
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