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夜行列車は、ずんずんと、
深い深い夜の中をすすんでいきます。
夜の闇につつまれると、
家も畑も海もただ一色のカーテンになります。
オサムは、毎週日曜の夜にこの列車に乗って、
一晩かけてふるさとから都心に帰ってくるのです。
田舎では田舎の、都心では都心の仕事が待っていました。
月がのぼると、隠されていたけしきが
ほんのりよみがえります。
家には、休息している人たちが呼吸をしていて、
畑には風が吹きサワサワと夏野菜がゆれているのです。
海にはその奥にさかなたちのゆらめきがあり、
ただ夜がそれらをくるんでいるだけなのでした。
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