月の駅

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オサムはためいきをひとつして、窓を流れていく そんな景色をぼんやりと見ていました。 働き続けた身体はとてもだるく、ほんとうは すぐにでもねむらないと元気にならないような 気がしていました。  なのに、からだとはうらはらな気持ちは、 ひかる月に見入っているのでした。 月の光はつめたい剣のようにオサムの心を 突き抜けたと思うと、ミストを思わせるように やさしくやさしく心と体全体に広がっていくのです。  そして、疲れてしおれた部分に光が 行き渡っていくような心持ちになるのでした。  月の光に身を任せて目をつむると、 目の中に景色があらわれました。  それは、オサムの見慣れない、殺風景な景色。  オサムは目を開けました。  夢を見たかと思ったのです。  夢ではありません。  さっきと同じ景色がはっきり見えます。
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