第10話 高木春紅編①

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◇ 「……あ、サク? うん。今ヒマ? ……嘘、どうせ寝とったやろ。うん、そこでええ?……ほな1時間後な」  電話を切ると、俺はカーゴパンツのポケットに携帯を突っ込んだ。  何も考えないで服を選ぶと、爪先からトップスまで全部黒になってしまう。だからストールや鞄なんかは、なるべくビビッドカラーか柄物を選ぶようにしている。  けれども今日は、そういうグッズさえ黒にしたい気分だ。  俺は軽くため息を吐いて、クローゼットにかけてある豹柄のストールを取り、アパートを出た。  コウジさんが亡くなって、ちょうど1か月が経つ。  正直、まだ信じられない。  コウジさんは、半年前に交通事故で左手を負傷し、バンド活動を休止していた。  そのバンドが、復活したばかりだった。  しかも、俺のバンドのライブで復活ライブを行ったんだ。
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