第10話 高木春紅編①

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「おひとり様ですか?」 「いや、あとでもうひとり来ます」 「そのときはお声掛けください。何時間お取りしましょうか」 「フリータイムで」 「機種は」 「いつもの」  と言えば、女の子は「わかりました」と笑った。  受付を済ませると、ドリンクバーでアイスココアを選び、部屋番号の書かれたカードを持って個室に入る。  黒いジャケットと豹柄ストールをハンガーにかけ、赤いソファにどかりと座った。  デンモクを手に取ると、歌手名で迷うことなく「Vacuum」と入力した。  曲リストで表示されているのは、たったの1曲だけ。メジャーでない映画の主題歌になった曲だ。俺はそれを予約した。  マイクを取って立ち上がる。
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